頭痛について
頭痛にはさまざまな要因があり、その軽重も異なりますので、「頭痛」とひとくくりにすることはできません。
脳腫瘍
たとえば、脳腫瘍。この場合は、寝起きのときに非常に強い頭痛を感じます。痛みが強すぎて起き上がることができなくなるほどです。ただ、一度起きてしまえば頭痛が軽減されるため重篤な病気だとは気付かず、病院に来るのが遅れてしまうこともあります。
しかし放っておくのは危険です。脳腫瘍の場合、腫瘍ができた場所によって、「頭痛」だけでなく、さまざまな症状が出ます。例えば、左の前頭葉~側頭葉のあたりにできると言語障害や記憶障害、あるいは右半身麻痺などの症状をきたします。
くも膜下出血
くも膜下出血は発症前には何の前兆もなくある日突然、今までに経験したことがないような激しい頭痛によって始まります。
これは血管の分岐部分にできたコブ(脳動脈瘤)があたかも風船が破裂するように破れ出血するものです。 くも膜下出血を発症した瞬間、嘔吐を伴い、場合によってはそのまま意識障害に至ることがあります。ご本人、ご家族に異常があれば、すぐに受診してください。
このような、とても怖い「脳の病気」は、MRI検査でその正体がはっきりします。ただ、「片頭痛」のように、MRI検査では判明しないものもあります。
片頭痛
片頭痛は脳内の血管が過剰に拡張した結果、血管を取り巻く神経を刺激することによって引き起こされます。
脳は「硬膜」と呼ばれる膜につつまれて頭蓋骨に収められています。この硬膜には血管が走っており、血管周囲には痛みを感じるための神経である「三叉神経」と呼ばれる神経が取り巻いています。ストレスなどをきっかけにこの三叉神経が刺激され、血管の周りに炎症を起こします。
炎症が起きると、血管が拡張し、ますます血管周囲を取り巻く三叉神経を刺激します。この結果、三叉神経から「神経ペプチド」と呼ばれる物質が放出され、これが脳内の血管に作用し、過剰に血管を拡張させます。
脳内の血管周囲にも硬膜の血管と同様に三叉神経が取り巻いており、血管が過剰に広がった結果、三叉神経が刺激され、この刺激が大脳に伝わり、「痛み」として認識されることによって片頭痛は引き起こされます。
片頭痛は、ズキンズキンと脈打つような痛みをきたします。時に嘔気・嘔吐感を伴い、日常生活にも支障をきたします。
ただ、これは脳腫瘍などとは違い、薬でコントロールすることが可能です。
「頭痛がある」というだけだと、それが片頭痛なのか、それとも重い病気が隠れているのかわかりません。「片頭痛はMRI検査では判明しない」というのは事実ですが、「頭痛がする」という状態でMRI検査を受ければ、その頭痛が、片頭痛によるものか、それともその他疾患によるものなのかがわかります。 そのため、迅速で的確な処置ができるようになります。
めまい
めまいのなかには、大きく分けて2つの種類があります。
- 天井がぐるぐるまわる
- 雲の上に乗っているかのような、ふわふわした感じがある
一般的にめまいは、「耳鼻科の領域だろう」と思われがちです。しかし、脳出血等の異常をきたした場合にも、めまいが起こることがあります。これは、小脳が「体の平衡感覚やバランス感覚」を担っているからです。
小脳に異常をきたした場合は、めまいのみならず「まっすぐに歩くことができない」「鼻をかもうとしているのに、手がうまく動かない」等の症状を伴います。
これも、MRI検査によって正しい診断が可能です。
認知症(物忘れ)
今ではよく知られる名称となった「認知症」。これは、ある日急に発症するものではなく、徐々に進行していくものです。そのため、ご家族の方も、最初はそれと気づけないことがあります。
「今まで作れていた料理が作れなくなった」「季節にあった洋服を選べなくなった」「食事をとったことを忘れている」「今まで穏やかな人だったのに、急に性格が変わってしまった」というような変化が症状として表れます。
認知症には、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」などがあります。 これらの認知症は、原則として進行性です。そのため、「完治」は難しいと言われています。しかし、早期発見によって進行を遅らせることは可能です。
また、認知症の一部は「完治」させることもできます。たとえば、「特発性水頭症」などによるものがそうです。これは、脳を保護している脳脊髄液が、本来溜まるべきところではない場所(脳室)に溜まることによって起きる疾患です。認知症様の症状に加えて、歩行障害や尿失禁を伴いますが、時機を逸しなければ手術で完治は可能です。
これらの症状はいずれも、心理テストやMRI検査で診断ができます。